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guest talk "bicara bicara"

bicara bicara(ビチャラ ビチャラ)とは、インドネシア語で
「おしゃべり」のこと。
このコーナーでは毎回ゲストを迎え
モンスーン・ニッポン・プロジェクトについて自由に語り合います。

タイトル

遠山:今日はこれを持ってきたんですけど……(バッグからB5版のスケッチブックを取り出す)。

上田:お?! それは何ですか?

遠山:山本さんとの打ち合わせ中に思いついた言葉を書きとめたものです。たとえば……(ページをパラパラめくりながら)「風まかせ」とか、「飛んでる」「省エネルギー」「等身大」……こんな言葉を書いていたようですね。

佐藤:確か、渡り鳥をイメージして描いていたんだったよね? ツバメとかチドリとか?

山本:最初にツバメと言ったのは私ですね。もともとこのプロジェクトが、モンスーンによって生まれる季節を大事にしながら生活していこうというものだったので、ロゴにも自然科学的なアプローチを残した方がいいと考えていたんです。だけど、倉石さんとお話するうちに「どうにかなるさ」的な雰囲気も加えた方がいいんじゃないかということになったので、ロゴの絵にはもっと親しみやすいものにしたいと思ったんです。季節に合わせて生きている生き物=渡り鳥だ!ということになって、遠山さんにロゴ制作のお願いをしたんですよね。

遠山:そんな話を聞きながら鳥の絵のラフを描いていったんです。それがこの後のページ。いっぱい、いっぱい、とにかくいろんな鳥を考えましたね。そんなある日、「あれ? この鳥の形って日本の地形に似ている!」って気づいたんですよ。それから絵の具を使って本格的に描き始めたのが、これらですね……(目の前のテーブルに数枚の原版を並べていく)。

上田:こんなにバリエーションがあるんだ。

倉石:ほんと。北海道、本州、四国、九州。日本列島の形に見えますよね。

佐藤:僕らから見ると文脈がわからないんだけど、それこそが遠山さんの絵の一番の魅力なんだよね。自由に見えて、かなりコンセプチュアル。

遠山:絵の勉強をちゃんとしたことがないことが、逆に良かったのかなぁって思うんですよね、最近。自分で絵の具を使っていろんな描き方をしていると、新しい方法を見つけて「すげぇ!」と思ったりするんですけど、実はそれは既にあるテクニックだったりして(笑)。

佐藤:描くことを新鮮に受け止められるのがいいんだろうね。

倉石:このロゴを見た瞬間、漠然とイメージしていたものと見事に合致してすっと心に入ってきた。こういうのって、一生懸命説明しようとすればするほど理屈っぽくなっちゃうものなんだけど、この絵には言葉にできない説得力があるような気がしますね。

上田:僕はこの絵によってプロジェクトそのものに広がりが出てきたような気がしました。「モンスーン・ニッポン・プロジェクト」って、おおらかで自由なんだけど、それだけじゃダメ。この鳥が持っているちょっとした賢さのようなものに、そのことが表現されているような気がします。

03.jpg

上田:倉石さんが初めてこのプロジェクトを僕に話してくれてからずいぶんたつんだけれど、僕から佐藤さんや山本さんへ、山本さんから遠山さんへ、と少しずつ話が伝わって、広がって、今、こんなにいいロゴも出てきた。だけど、「モンスーン・ニッポン・プロジェクト」がどんな内容なのかは、まだまだ明確じゃない。皆、「なんとなく面白そうだなぁ」という思いだけで集まってきていますよね。

佐藤:今、流行っているエコとかロハスって、ただ雰囲気だけで善悪の話や倫理的な話になっているでしょ? それに対して僕らはなんとなく違和感を感じているわけですよ。だけど、この「モンスーン・ニッポン・プロジェクト」の元にあるのは善悪とか倫理の話ではなくて、風とか季節とか自然によるもの。ちゃんと根拠がある。だから腑に落ちるんだよね。

倉石:タイに行くとトゥクトゥクという三輪タクシーがあるじゃないですか。窓も空調もない。でも、走り出すと風を受けて気持ちいい。風を受けて気持ちよく走れるはずなのに、日本では窓を閉め切って空調を効かせたタクシーが走っている。ヘンだなぁって皆思わないのかな? って思うんですよね。

佐藤:日本の気候を考えれば草履の方がいいのに、皆、無理して革靴を履いて水虫になって、それを治すためにすごい努力をしてみたりね。ずいぶんズレたところで皆あくせくしてるんだよね。

山本:住宅もそう。都会のオフィスビルやマンションって、どんどん密閉されて風が通らなくなっていて、中だけエアコンがガンガン効いている。これって何だかヘンだなぁって思いますよね。

上田:そういえば、遠山さんは最近東京から地方へ引っ越しをされたばかりでしたよね?

遠山:そうなんです。もとはお寺だったところなので、風通しは良過ぎるぐらいいいですね(笑)。さすがに冬は寒かったけど、夏はたぶん気持ちがいいだろうなぁと今から期待しているんです。

倉石:そういう意味では、今、遠山さんが一番季節を感じながら暮らしているんでしょうね。

遠山:そうかもしれませんね。中庭に大きなどんぐりの木があって、子どもがどんぐりを拾ってきてうちの中で転がして遊んでたりしていますよ。

佐藤:こういう話をしていると、誰でも「あぁ、そうだよなぁ」って思いますよね。だけど、話をしていくとどうしても理の部分によっていってしまって硬い話になってしまう。困ったなぁ?というときに、遠山さんのこの絵がロゴとして上がってきたわけですよ(笑)。

遠山:そうだったんですか?(笑)。

佐藤:たとえ「モンスーン・ニッポン・プロジェクト」という英語が分からない人でも、遠山さんが描いたこの絵には反応すると思うんですよ。「なんだこれ?」って(笑)。それだけの情報量がある絵だと思うなぁ。

04.jpg

山本:遠山さんに描いてもらった鳥は、ロゴに採用した鳥のほかにもいろいろいますからね。このプロジェクトの代表として、これからどんどん世の中に飛び立っていって欲しいですね。

佐藤:同じじゃないのに、みんな「モンスーン・ニッポン・プロジェクト」の鳥だとわかるもんね。頭の色も羽の色も違うけれど、でもわかる。すごく曖昧なものを含んでいるでしょ。そもそも僕らがやろうとしていることも、その境界は非常に曖昧だもんね。

倉石:課題もまだまだいっぱいあるけれど、一つの方針としては皆が好きなようにこのプロジェクトを自分たちのものとして考えてもらって、好きな解釈を加えていってもらえるような、広がりのあるプロジェクトになればいいと思います。

上田:モンスーンというコンセプト自体は特別新しいわけじゃない。もともとそれぞれの土地にある季節や気候の話をしているわけで、逆に言えばそれにきちんと根ざして暮らしている人たちがいっぱいいるはずなんですよね。

倉石:その人たちをまずは見つけて、そこに話を聞きに行き、その人たちの体からにじみ出る言葉に耳を傾け、それをドンドン吸収したいですよね。

佐藤:そして、いろんな人が集まってくる場所になると面白いよね。皆の知恵が集まる場所、このプロジェクトがそういう場所になるといいな。僕ら、圧倒的に知恵が足りないんですよ。知恵が絶たれてしまっている。知恵の話は聞いているだけでも楽しいじゃない?

遠山:そういえば、伊勢神宮って式年遷宮と言って20年ごとに建て替えるそうなんですよ。理由は宮大工たちの伝統技術を次代に引き継ぐためなんだそうです。100年たってしまうと技術が絶たれてしまうから、20年に一度立て替えることでその技術を引き継ぐようにしているらしいです。

山本:いったん絶たれてしまった技術や知恵を取り戻すのは難しいですもんね。人間がちゃんと引き継いでいかなければいけないということですね。

上田:遠山さんが絵を描いていく中で鳥の中に日本列島を発見したように、僕らもこのプロジェクト全体の中で何かを見つけたいものですね。

遠山敦 Atsushi Toyama
1970年岐阜県生まれ。様々な媒体に作品を提供。個展にも力を入れ、海外でも多くの賞賛を得る。水森亜土とのコラボレーションをはじめ企画展にも積極的に参加。ペインティング、コラージュ、ドローイング等多彩な手法を駆使しながら生み出されるモチーフや色の構成力にファンが多い。
http://www.philspace.com/